今年度も、ランサムウェアによる脅威が続いています。独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が発表した情報セキュリティ10大脅威 2024 [組織]では、ランサムウェアによる被害が2016年以降連続で1位となっています。IPAが公開している情報セキュリティ10大脅威 2024」解説書内で取り上げられた、名古屋港統一ターミナルシステム事例では、リモート接続機器の脆弱性をつかれ約3日の作業の停止を余儀なくされるという甚大な被害がありました。
このような事態は、決して他人事ではありません。サイバー攻撃は日々巧妙化し、どの企業も常にその脅威にさらされています。
脆弱性管理によって、システム内の脆弱性の把握から対応完了までのサイクルを迅速化し、脅威リスクを減らすことが期待できます。
現代の企業が直面するサイバーセキュリティの脅威は、日々進化し続けています。新たな脆弱性が絶え間なく発見され、攻撃者は脆弱性を悪用して企業の情報システムに侵入しようとします。これらの脅威に対処するためには、効果的な脆弱性管理が不可欠です。しかし、多くの企業は以下のような課題を抱えています。
多くの企業が脆弱性管理の必要性を十分に理解していないため、適切な対策が講じられていないのが現状です。そのため、課題があること自体を認識できていません。
脆弱性管理には多くのステップがあり、それぞれに適切な方法とツールが必要です。企業はこれらのプロセスをどのように実施すべきかを明確に理解していない場合があります。
課題があることも認識できていないため、脆弱性管理に投資することで得られる具体的なメリットを理解していない企業も少なくありません。
脆弱性管理が属人的な作業に依存していることです。セキュリティ担当者が個々の脆弱性を手動でチェックし、対応策を講じるには多大な時間と労力が必要です。また、人的エラーのリスクも無視できません。これでは、脆弱性を見逃したり、対処が遅れたりする可能性が高まります。
結果として、組織的な脆弱性管理が実現できていないのが現状です。
これらの問題に対する解答として、効果的な脆弱性管理の実践が必要です。以下に、その具体的なステップを示します。
まず、企業全体で脆弱性管理の重要性を理解し、意識を高めることが重要です。経営層から現場の従業員まで、脆弱性がもたらすリスクとその対策についての知識を共有するための研修やセミナーを定期的に実施しましょう。
脆弱性管理は以下のステップで構成されます。
組織で管理する、システム内のインベントリを特定します。クラウド、オンプレミスなど問わず、管理するインベントリを全て識別します。
脆弱性情報を調査し、管理するインベントリに該当するものが無いか定期的なスキャンを実施し、システム内の脆弱性を特定します。
発見された脆弱性のリスクを評価し、重要度に応じて優先順位をつけます。リスク評価には脆弱性そのものの危険性の評価のほか、攻撃コードか流通しており実際に攻撃される可能性があるか、システムが外部に公開されているか、脅威にさらされた場合の影響はどの程度か、など総合的な評価のうえで優先順位付けが必要です。
優先順位に従って脆弱性を修正します。具体的な対策としては、ソフトウェアのアップデート、パッチの適用、設定の変更、セキュリティ対策の強化などがあります。
対策が適切に実施されたかを確認するために再度スキャンを行います。
脆弱性管理の結果を報告し、プロセスの改善点を見つけて次回に活かします。
効果的な脆弱性管理には、適切なツールの導入が不可欠です。組織的に脆弱性スキャナー、評価システムなどを導入することで、脆弱性の発見と修正を標準化・効率化できます。
効果的な脆弱性管理を実施することで、企業は以下の具体的なメリットを得ることができます。
脆弱性管理を通じて、システムの弱点を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。これにより、サイバー攻撃のリスクを大幅に低減し、情報漏洩やシステムダウンを防ぐことができます。
多くの業界では情報セキュリティに関する規制が厳格化しています。脆弱性管理を適切に実施することで、これらの法令を遵守し、法的リスクを回避できます。例えば、GDPRや日本の個人情報保護法などに対応するためには、脆弱性管理が不可欠です。
セキュリティインシデントが発生すると、企業の信頼は大きく損なわれます。脆弱性管理を徹底することで、顧客に対して安全なサービスを提供し、信頼を維持することができます。これは顧客満足度の向上にも繋がります。
脆弱性が悪用された場合の被害額は膨大です。事前に脆弱性管理を行うことで、インシデント発生時の対応コストを大幅に削減できます。また、ダウンタイムの短縮や業務の継続性を確保することで、経済的な損失を最小限に抑えることができます。
セキュリティ対策をしっかりと行っている企業は、顧客や取引先からの評価も高まります。これにより、競合他社との差別化を図り、市場での競争力を強化することができます。
脆弱性管理は一度実施して終わりではなく、継続的なプロセスです。定期的なスキャンや評価を通じて、システムやネットワークのセキュリティを維持し続けることができます。また、新たな脆弱性が発見された場合にも迅速に対応できる適応力を持つことができます。
脆弱性管理は、企業の情報セキュリティを強化し、ビジネスの継続性を確保するために不可欠な要素です。しかし、属人的な管理では限界があります。今こそ、標準化されたプロセスとツールを導入する時です。
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